活動レポート

八戸「まちなか女子目線。委員会」で、手書き地図のワークショップを実施!

2014年01月21日

自分が暮らす町のことを、自分の目線で見直し、自分の言動と行動とで表現する。青森県は八戸で活動する「まちなか女子目線。委員会」は、まさにそれを実行しようと結成されたプロジェクトチーム。10代~20代の女子を中心に(男性もチラホラ)、八戸という歴史ある町について日々考察し、地元を盛り上げていくためのさまざまな“表現方法”を模索している。

そんな、町の情報に対して高い感度と独特なフィルターを持つ女子たちをどのように束ね、集めた情報をどのようにアウトプットしていくか。手書き地図がその解決策のひとつになる可能性を秘めているとしたら、ぼくらの活動をお話することが何かしらのヒントになるかもしれない。そんな思いで訪れた八戸ポータルミュージアム[はっち]で、手書き地図推進委員会としての初めてのワークショップを行ってきた。

▼非公式な「手書き」でなければ表現できない、地元視点の町の魅力

「地域の資源を大事に想いながら、まちの新しい魅力を創り出す」という使命を持つはっちにおいて、2013年5月に結成した「まちなか女子目線。委員会」は、主に町の中心部の魅力について“自分たちの目線”で伝えるマップ作りやイベントなどを行っていく、特命プロジェクトチーム。その中心的メンバーで地元でタレント活動をする百香さん、女子高生のチエさん、そして「あまちゃん」に出演した人生の大先輩・長谷川武夫さんを交えて、ワークショップを開始した。 

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はっちでコーディネーターを務める今川和佳子さんによれば、チーム結成後にマップ作りの議論を重ね、すでに各メンバーの視点で町の魅力を書き出しており、次のステップについて思案しているところだったという。

「趣旨に賛同してくれた元気なメンバーがたくさんいることで、多様で魅力的な意見が多数出てきました。その一方で、十人十色の視点をひとつにまとめる難しさを感じています」という、目下の課題が見え隠れしはじめた中で、手書き地図推進委員会に白羽の矢が立ったわけだ。

日本各地の手書き地図を収集し、実際に現地まで行って町を歩き、作者に話を聞いていることが、ぼくらの強み。これまでの取材を通して気づいたことは、「どの手書き地図も“ほぼ一人”で作っている」という共通点。テーマも情報選択も、書き方もトーン&マナーも、すべて“ひとり”で行っているからこそ、メッセージ性が強いものになるし、統一感が出る。これが“平均・公平”とは真逆の“偏り”という魅力につながっている。そしてなにより、余計な力に翻弄されないというメリットがある。自分だけの物差しと判断で「良いものは良い、好きなものは好き」を表現できるのが、手書き地図の良さなのだ。

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その意味では、「まちなか女子目線。委員会」が抱える課題に対するぼくらの考え方は明確で、責任編集長をひとり立てるということ。たくさんの仲間を巻き込んで手書き地図を作っていく場合、こうした責任編集長という“最小単位”の決定権と、それを尊重して面白がってくれる“周囲の編集者・記者”という協力体制が理想的。これなら、観光や行政の事業として行う“公平性への配慮や標準化された汎用情報”としての地図作りを回避できる。町の本当の面白さは、やはり独自的で非公式な取り組みからでなければ、魅力的に伝えることは難しいのである。

「まちなか女性目線。委員会」の案内で、ディープ八戸を知る

 ワークショップの中盤は、「百香さんが編集長」と仮定して、どういう視点でなにを取り上げるのかを意識しながら、自分の暮らす町を外からやってきたぼくらに紹介してもらうというもの。まさに“街中を女子の目線”で実況解説してもらうわけで、なんとも贅沢なガイドツアーである。

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部活帰りに必ず立ち寄る青春のたいやき屋、店員の方がいつも緊張しているという“コミュニティ”スペース、八戸で一番おいしい焼き鳥屋・・・枚挙にいとまがない地元ネタを耳にしながら、ぼくらは後をついて行く。どの場所にも地元の人しかいないという、八戸のほんとうの日常。もしぼくらが観光旅行で来ていたら、これらのお店を訪れる可能性はないに等しいだろう。

このような“町でウワサされる場所や人”を訪ねる手段として「手書き地図」が活きる。そう考えれば、“地図を作る”のが先なのではなく、“町のウワサや日常の小ネタを集める”のが先で、その集まった情報を可視化する作業が「地図作り」であると言える。つまり、雑談的なミーティングや座談会のような場が、地図作りの最初の一歩なのである。これなら、初めて地図を作るメンバーも流れに入ってきやすいだろう。

手書き地図作りのポイントは「過ぎたるは及ばざるがごとし」!

手書き地図の取材をしていて感じることは、結局それを「デザインし過ぎる」と、世の中にある“万人に使い勝手がよく、完成された地図”を作る行為と何ら変わらなくなるということ。これは「編集し過ぎる」ことにも言える。何が手書きの魅力かと言えば、それはやはり「突っ込みどころがある」ということで、その不完全な感じと余白によって、読み手の想像力をかき立てることができる。方角、距離感、高低、色彩、道路の状態、目印になる大きな建物。そういった“正しい地形的な情報・要素”を地図に反映していったら、おそらく世の中にある多くの地図と似たようなものになってしまうだろう。

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いつしかワークショップの場には老若男女を問わず地元の方々が場に加わっている。女子高生からご老人まで、多様で混沌としたすばらしい雰囲気。みな八戸を愛しており、少しでもこの町での暮らしを楽しいものにしていきたいという思いがビシビシ伝わってくる。多様な視点からたくさんの情報が集まる中、「あまりまとめ過ぎないで、ほどほどのところで作り始めちゃったら?」という研究員の言葉に、全員が頷いた。

この「エイ!ヤッ!」という感じに手書き地図作りの極意がある。計画し過ぎず、編集し過ぎず、デザインし過ぎない。どこか欠けた状態で作る地図にこそ、標準的な地図にはない面白さが生まれる。

まさに八戸の玄関![はっち]の居心地が良すぎる!

ところで、今回ワークショップでお邪魔したはっちは、本当に素敵な空間。エントランスをくぐると、八戸を中心とする南部地方の郷土玩具「八幡馬」がにぎやかに出迎えてくれる。ポータルミュージアムとはよく言ったもので、ここはまさに八戸の玄関と言うべき地元の情報拠点で、地域文化や資源を集約する機能を備えた最新鋭の施設。ギャラリー、シアター、スタジオにワークステーション。アーティストが滞在しながら創作活動ができるレジデンスがあるかと思えば共同キッチンなどもあり、人と人が繋がるような“ソーシャル”な雰囲気が考慮された設計になっている。

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フリーランスとなって日が浅いぼくだが、もし八戸に住んでいたら、まっさきにここに“通勤”するだろう。集中できる環境は作業に向いているし、アイデアが沸いてきそうなクリエイティブな空間は企画や執筆、ミーティングなどにも適している。ここをベースに文化活動や創作活動に取り組めば、自分の力も可能性も開放されそうでワクワクする。

「きっと素敵な手書き地図が出来るね」

ぼくらはそう確信して、はっちを後にした。次に八戸を訪れる時は、完成した手書き地図を取材できるかもしれない。

八戸のワークショップのポイント

手書き地図推進委員会としては、初めての出張ワークショップとなった八戸遠征。まだ手探りながら、ぼくらが考える「手書き地図作り」についても、その輪郭を作っている途上で行ったワークショップだったのだが、この時のポイントを整理しておきたい。

1.基本的に、手書き地図は“ほぼ一人”で作る

つまり、自分が編集長。地図にのせる情報は、自分の偏愛的な視点で選んでしまってよい。もしグループで作るなら、責任編集長という“最小単位”の決定者と、それを尊重して面白がってくれる“編集者・記者”という協力体制で、まずはひとつの地図を作ってみよう。編集長が増えれば、多様な地図が増えていくことになる。

2.雑談や座談会を行うことが、地図作りの最初の一歩

“地図を作る”ことに囚われるのではなく、“町のウワサや日常の小ネタを集める”ことを先にやってしまおう。そうして集まった情報を可視化する手作業が、つまり“手書き地図を作る”ということなのだ。

3.何事も、やり過ぎは禁物

あまり計画し過ぎず、編集し過ぎず、デザインし過ぎない。作り込み過ぎてしまうと、突っ込む余地のない“標準的な地図”と変わらなくなってしまう。なにかが足りない状態で作った地図の方が、それを想像する余白になり、実際に行ってみたくなる。

取材・文・写真 大内 征(手書き地図推進委員会 研究員)

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レポート:大内 征

投稿日:2014年01月21日

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